金の売り方・買い方ガイド

金を売ったときの税金

譲渡所得・特別控除・支払調書のしくみを、国税庁の公表内容に沿って整理します

金地金を売って利益が出た場合、その利益には税金がかかります。 売った金額そのものではなく、買ったときより高く売れた分(値上がり益)が対象です。 逆に買値を下回る価格で売ったなら、課税される所得は生じません。

この記事について 筆者は税理士ではありません。ここに書いているのは国税庁が公表している一般的な取扱いの整理であり、 個別の税務相談ではありません。取得の経緯・保有期間・他の所得の状況によって結論は変わります。 実際の申告にあたっては、所轄の税務署または税理士にご確認ください。

1. どの所得になるか

個人が保有していた金地金を売った場合、国税庁は 「原則、譲渡所得として、給与所得など他の所得と合わせて総合課税の対象となります」 としています( タックスアンサー No.3161 金地金の譲渡による所得)。

総合課税とは、給与などほかの所得と合算した金額に対して税率が決まるしくみです。 株式の売却益のように分離して一定税率で計算するのではないため、 給与が高い人ほど、同じ売却益でも税負担が重くなります。

例外に注意 営利を目的として継続的に金地金を売買している場合は、譲渡所得ではなく 事業所得または雑所得になります。この場合は50万円の特別控除も、 保有5年超の1/2の扱いも使えません。単発で手持ちの地金を売るのか、 反復して売買しているのかで扱いが変わります。

2. 計算のしかた

まず「譲渡益」を出します。

譲渡益 = 譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)

譲渡価額=売却して受け取る金額/取得費=買ったときの価格(購入時の手数料を含む)/ 譲渡費用=売却時に業者に支払った手数料など

次に、保有期間によって課税される金額が変わります。

保有期間区分課税される譲渡所得
5年以内短期譲渡所得 (譲渡益の合計)− 50万円
5年超長期譲渡所得 {(譲渡益の合計)− 50万円} × 1/2

つまり5年を超えて持っていた金地金は、課税対象が半分になります。 売り急ぐ理由がないなら、保有期間が5年に近い場合は5年を超えるまで待つだけで 税負担が大きく変わります。

50万円の特別控除は「年間で合計50万円」

特別控除は1回の売却ごとに50万円ではありません。国税庁は 「その年の金地金の譲渡益とそれ以外の総合課税の譲渡益の合計額に対して50万円」と明記しています。 同じ年にゴルフ会員権や書画骨董など、ほかの総合課税の譲渡益がある場合も 合わせて50万円が上限です。

短期と長期の両方がある年は、短期の譲渡益から先に特別控除を差し引きます (1/2にならない短期から先に引くほうが納税者に有利なため)。

計算例

例1: 8年前に買った100gを売る 取得費 800,000円(当時8,000円/g)、譲渡価額 2,450,000円、売却手数料 16,500円。
譲渡益 = 2,450,000 −(800,000 + 16,500)= 1,633,500円
保有5年超なので、課税される譲渡所得 =(1,633,500 − 500,000)× 1/2 = 566,750円
この566,750円が給与などと合算されて課税されます。

例2: 3年前に買った100gを売る(同条件) 保有5年以内なので、課税される譲渡所得 = 1,633,500 − 500,000 = 1,133,500円。 同じ売却益でも、5年を超えているかどうかで課税対象額が2倍違います。

例3: 譲渡益が50万円以下 その年の総合課税の譲渡益の合計が50万円以下なら、特別控除で課税所得は0になります。 ただし0になることと、申告しなくてよいことは同じではありません(下記4を参照)。

3. 取得価額を証明できないと極端に不利になる

譲渡益は「売値 − 買値」で計算します。つまり買値を証明できないと、 売値のほぼ全額が利益とみなされかねません。

土地・建物については、取得費が分からないとき 「売った金額の5パーセント相当額を取得費とすることができます」という取扱いが定められており (タックスアンサー No.3258 取得費が分からないとき)、 金地金についてもこれに準じた扱いがされる場合があります。 しかしこれは売値の95%が利益扱いになるということであり、極めて不利です。

保管しておくべきもの

  • 購入時の計算書・領収書(地金商が発行する売買計算書)。金額・重量・日付が記載されています
  • 売却時に受け取る計算書。再発行できないと明記している業者もあります
  • 購入代金を払った銀行の振込記録・通帳(計算書を失くした場合の補強材料)

相続・贈与でもらった金地金の場合

相続や贈与で取得した金地金は、原則として 亡くなった方(贈与した方)の取得費と取得時期を引き継ぎます。 相続した日ではなく、もとの持ち主が買った日から数えて5年超かどうかを判定します。 古くから保有されていた地金なら、相続直後に売っても長期譲渡になることがあります。

一方で、もとの持ち主の購入時の計算書が見つからないケースが最も多い問題です。 遺品の中から売買計算書・預金通帳・購入時のパンフレット類を探すこと自体に金銭的な価値があります。 なお相続税の課税対象になった財産を相続開始から一定期間内に売却した場合、 相続税額の一部を取得費に加算できる特例(取得費加算)が使えることがあります。 該当しそうな場合は税務署や税理士に確認してください。

4. 200万円を超える売却と「支払調書」

「金地金等の譲渡の対価の支払調書」という制度があります。 地金商は、顧客が1回の取引で200万円を超える金地金・プラチナ地金・金貨・白金貨を 売却した場合、その内容を記載した支払調書を所轄の税務署に提出します。

項目内容
提出のきっかけ1回の取引につき200万円を超える売却
対象金地金・プラチナ地金・金貨・白金貨
対象外銀地金、指輪やネックレスなどの貴金属製品
提出する人買い取った業者(本人ではありません)
記載される内容氏名・住所・個人番号(マイナンバー)・商品の種類と数量・支払金額・支払確定年月日
売却時に必要なもの本人確認書類に加えてマイナンバー確認書類

支払調書が提出されると、税務署はその売却の事実を把握します。 これは取引を記録するための制度であって、税金を計算する制度ではありません。 支払調書が出る/出ないと、申告や納税が必要かどうかはまったく別の話です。 この点は誤解が多いので、分割売却の考え方で改めて詳しく扱います。

5. 確定申告について

譲渡益が特別控除の50万円以下に収まり、課税される譲渡所得が0円になる場合、 その譲渡について申告書に記載する所得は生じません。 また給与所得者には、給与以外の所得の合計が年間20万円以下であれば 所得税の確定申告を要しないという取扱いがあります。

ただし、次の点に注意してください

  • この20万円の取扱いは所得税の話であり、住民税には適用されません。 所得税の申告が不要な場合でも、住民税の申告が必要になることがあります。 お住まいの自治体に確認してください
  • ほかにも申告すべき所得がある人、医療費控除などで確定申告をする人は、 金地金の譲渡所得もあわせて申告する必要があります
  • 同じ年に複数回売った場合は合算して判定します。1回ごとではありません

参考リンク(国税庁)

税制は改正されます。上記のリンク先で最新の内容をご確認ください。

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